第88章 自涜 ※
「――――ハンジさん。」
「ん~?」
「………リヴァイ兵士長は、お元気ですか……?」
「……うん、元気だよ。相変わらず不機嫌な顔だけどね!」
「……なら、良かったです。」
「ふふ。」
「??どうしたんですか?」
「いや、そういえばリヴァイも気にしてたから。ナナがどうしてるかって。」
「……そう、ですか……。」
喜んではいけないのに、ちょっとだけ、嬉しいと思ってしまった。
「ナナは今結構大変なんだって聞いた。」
「――――はい、思っていたより、難しくて……こんなにも、聞き耳を持ってもらえない立場なんだとは正直、思ってなくて……。」
「……そっか。」
ハンジさんはふわふわと私の頭を撫でた。
「――――エルヴィンに助けてって、言っていいと思うよ?きっと悪知恵を貸してくれる。」
「……でも、エルヴィン団長には私個人の家のことなんて関係ないので……そんなことを考えさせるのは申し訳なくて。」
「どうかな?待ってると思うけどなぁ、ナナに頼られるのを。」
「そうなんですか?」
「そうだよ、男ってさ、好きな女に頼られたいものじゃない?まぁ知らないけど!」
「そういう、ものですか……。」
「ちなみに、私だってナナに頼られたいよ?」
「えっ。」
「……そっか、じゃあきっと男とか女とか異性だとか同性だとか、関係ないんだね。大事な人に頼られたい、力になりたいと思うのは当然なんだよきっと。」
ハンジさんが明るく笑ってくれる。
眼鏡をかけていない彼女の目はいつもよりも更に優しく見えて、思わず涙が滲んでしまう。