第8章 訓練 ※
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ナナの言葉が不自然に滞る。
ふと目をやると、かくん、と頭を垂れ、寝息を立てていた。ついいつものクセで、紅茶にブランデーを混ぜてしまった。
といっても、ほんの数滴だったんだが。
俺は少し呆れながらも、ナナの寝顔を眺めていた。
ナナの寝顔を見るのは、これで三度目だ。その意志の強い眼差しも、年のわりに大人びた御託を並べるその唇も、眠っている間は無防備で隙だらけで、まるで地下街に居た頃と変わらないように見える。
ナナと再会してから、目まぐるしく自分の中に知らない感情が芽生えていっているのを自分でもわかっていた。
ナナを自分の手の届くところに置いて、守りたいという庇護欲。
いっそ閉じ込めて、誰の目にも触れないようにしてしまいたいという支配欲。
自分の手で無垢な蕾を開きたいという征服欲。
どれもこれも暗く淀んでいて、俺があいつに抱いていいものではないのに、その欲求を諦めきれない。
自分が、いかに歪な人間であるかを思い知る。