第87章 私欲
「ねぇナナ!今日は帰らなきゃいけないの?」
「いえ、王都招集の日は泊まってくると言ってあるので、大丈夫です。」
笑顔で答えると、ハンジさんがエルヴィン団長のほうにぐるっと顔を向けて、何か言いたげに目を細めた。
「ふぅ~~~~ん?ちゃっかり自分ばっかりナナを独り占めってわけか。むっつりめ。」
「――――ナナは離団してるからな。兵士ではないただのナナは俺のだ。俺が独り占めするのは当然だろう?」
「……エルヴィン団長……!」
なんて恥ずかしいことをサラッというのだと、顔が赤くなる。そんな私をハンジさんが眉を下げて見下ろして、頭をぽんぽんと撫でる。
「ふふ、まぁいいけど!ナナが幸せそうだから。さて夕飯は何食べよっか!ナナ、何がいい?」
「え、えっとですね……、悩んでしまいます……!」
「一軒に絞らなくてもいいよ!!はしごしようはしご!!!」
「そ、そんなに食べられないですよ……!」
ハンジさんに手を引かれて、王都の道を歩く。
それだけでとても楽しい。
この時間が私に元気をくれる。
エルヴィン団長やハンジさん、リヴァイ兵士長やミケさん、みんなのところに帰ることを栄養にして、私はまた明日から頑張れるんだ。