第87章 私欲
翌日。今日は仕事の休みをもらっている。
ハルが選んでくれたワンピースに身を包んで、日が暮れる頃に馬車で兵団本部まで向かう。
門前で待っていると、門の奥からエルヴィン団長が歩いて来るのが見えて、胸が弾む。と同時に思わず手櫛で髪を整え、ワンピースに乱れがないか、化粧は大丈夫かと、あたふたと気にしてしまう。
よくよく見てみると、エルヴィン団長の横にもう一人の人影が――――――
「―――――ハンジさん!!!!!」
私は思わず叫んだ。
私の声に気付いたハンジさんが、大きく手を振って私に駆け寄ってくる。
門から勢い良く飛び出して来たハンジさんに私も駆け寄って、ぎゅっと強く抱きしめ合う。ハンジさんにこうしてもらうのも、随分久しぶりだ。
「ハンジさん、ハンジさん……!嬉しい、知らなかったです、来ていらっしゃったなんて……!」
「そうなんだよ!ナナに会いたいなぁって言ったら、エルヴィンが一緒に来ていいって言うからさ!!」
ハンジさん越しにちらりとエルヴィン団長を見上げると、とても穏やかな目で私を見つめている。こうやっていつもあなたは、私の知らないところで私の心を支えてくれている。