• テキストサイズ

【進撃の巨人】片翼のきみと

第86章 遺志




仲間が食われているのを後ろに、逃げる。

ただひたすらに北に向かって―――――トロスト区のある方角へ向かって、森の中を走る。

どう考えたって、生きて帰れるはずがない。巨人の蠢くこの壁外で、馬も立体機動もなく。

ただ餌が闊歩しているようなものだ。現に、同じようにして数年前の奪還作戦で食われたのであろう人間の骨が、そこにも落ちていた。



――――でも、諦めない。

屈しない。

私が出来ること――――それは、この現状を、余すところなく記録して残して――――、後の仲間に繋ぐことだ。





「耐えろ、耐えろ……!書け、残せ!!!私の生きた意味を………!!!」





胸ポケットからメモを取り出し、走りながら起こった出来事を記す。

意志を込め、己を奮い立たせるように



“私は屈しない”



そう記した瞬間、その覚悟を試すかのように目の前に巨人が現れた。





「―――――!!!!」





6m級の、頭の大きいアンバランスな巨人が、私を見ている。なぜか、すぐに私を食おうとしない。

奇行種なのだろうか。

腰が抜けてその場に座り込んでも、書き続ける。



目の前にその大きな口があり、次の瞬間その口から発せられた音に驚愕した。





「………ユ…ミル…の……たみ………」



「―――――?!!?…………今、何か、言った………?」





途切れながらも確かにそう言った。私が問うと、その巨人は次の言葉を発した。





「ユミル……さま………」





私の顔を見て、敬意を表すように身を伏せた。





「よくぞ………」



/ 3820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp