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【進撃の巨人】片翼のきみと

第86章 遺志




前回の壁外調査の時のような荒天もなく、多少の襲撃と戦闘はあれど、どうやら順調に事が進んでいる。

1日目の日が落ちる頃、ウォール・マリアに辿り着いた。巨人どもが動かなくなって束の間の休息をとる。

ふと目をやると、アリシアがリヴァイ兵長に話しかけているのを見た。

他の男たちがアリシアに話しかけれてその上目遣いで見つめられると、大抵頬を染めて―――――、そのあとはずっとアリシアの姿を目で追う。

だけど兵長はアリシアに目を合わすこともなく、アリシアの手を振り払うようにその場を後にした。私はほんの少しざまあみろと、思ってしまった。



もしリヴァイ兵長がどんな女性にもなびかない理由が、まだナナさんを想っているからだとしたら――――――、一層素敵なのに。







「――――おいイルゼ、初の索敵はどうだ?」



話しかけてくれたのは、ゲルガーさんだ。私たちの最左翼索敵の一つ前、左翼索敵初列十一索敵班にいた。

正式に入団したのは私よりも1年後のはずなのに、その並外れたセンスでもうナナバさんたちのような熟練兵士に引けをとらない。索敵班にも、随分初期から配されている。



「ゲルガーさん……。はい、ちょっとやっぱり怖いですが……なんとか、やってます。」

「ははっ、素直じゃねぇか。まぁそうだよな。俺も遠くからデカい足音が聞こえて来る度に震えてたが―――――、まぁ仲間もいるし、何より俺たちがしっかりしなくちゃこの隊は終わりだ!と思えば、力も沸いて来る。」

「……はい。」

「お前はいつも訓練でも熱心で伸びもすごかったからな。それに真面目でそのほかの仕事でも堅実にやってのける。そういったところが評価されての抜擢だと思え!」

「……兵長にも、似たことを言われました。」

「そうか。はは、俺が言うよりあの人が言うほうがよっぽど説得力あるな。」

「そんなことないです。――――ありがとうございます。」

「いや。………じゃあな、明日の復路も頑張って行こうぜ。」

「はい!」


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