第86章 遺志
―――――――――――――――――――
――――調査兵団に入って3年目。
今回の壁外調査で貼り出された配置指示書を見て、震えた。
今までは伝達や荷馬車護衛班に配置されることが殆どだったのに―――――ついに来た、最左翼の………索敵班だ。
索敵班は最も巨人との遭遇・戦闘率が高いため、新兵は配属されない。群を抜いた才能を見せる新兵じゃない限り、何度も死線を潜り抜けてきた兵士を中心に固められる。
でもどんなに強くても、あっけなく死ぬ時は死ぬということをまざまざと思い知ったのは―――――尊敬する、リンファさんが死んだ前回の壁外調査でだ。
いつも見てた。
気高くて美しいリンファさんの涼やかで清らかな美しさ。
流れるような黒髪。
私も同じ黒髪を持っていることが、少しだけ誇らしかった。
そのリンファさんが命を懸けて守ったのは、いつもリンファさんと並んでいたナナさんだと聞いた。
優しくて美しくて、不安そうだった新兵の頃の私に、よく声をかけてくれた。
かつての―――――リヴァイ兵長の恋人だった人。
いつからかリヴァイ兵長の横に並ばなくなってしまったのが、私は切なかった。
今は一時離団しているけれど、いつか戻って来たら、リヴァイ兵長の横に並んで欲しい。
見惚れるほど、美しい二人だ。
――――私はどうやったって兵長の心を手に入れるなんて不可能だから。
せめて気高く、強く、諦めずに戦って―――――兵長の力に、ほんの少しでもなりたい。