第85章 逢瀬 ※
足早に宿の廊下を進んで、ナナの手を引いて部屋に押し込む。部屋に入ったナナは扉を背にして俺を見上げる。
ガチャ、と鍵をかけたのを合図に、ナナを扉に押し付けて唇を奪う。
「……っ……ぁ、………ん、………。」
ナナは驚きもせず、受け入れる。
いやむしろ期待していたように両腕を俺の首に回して、いつになく積極的だ。ナナが俺に欲情している事実にまた興奮が沸き上がる。
静かな部屋に、唇と唾液が織りなす卑猥な音が響く。
しばらくして唇を離して、ナナの顔を両手で愛おしく包んで額を合わせたまま問う。
「――――ナナ、君の魅力に輪をかけるこの化粧は、一体誰のためにしてきたんだ?」
「―――……あなたの……エルヴィンの、ため………。」
「―――じゃあ、この君の凛とした美しさを際立たせるワンピースは、誰に脱がされる期待をして着て来た………?」
耳を舐めて犯しながら、囁く。
「あっ………ぁ、………エルヴィンに………っ……、や……ん……っ……!」
「――――帰りたくないのは、こうしたかったからか?」
「……そう……っ……、エルヴィンに………触れ、たかった………、触れて、欲しかった……。」
「――――可愛い―――――俺の、ナナ。君の望むように――――……奥の奥まで、触れてあげよう。身体の隅々まで、余すところなく――――……」
ナナの唇を再び塞ぎながら、身体を抱き上げてベッドに運び、首筋を噛むように愛撫しながら、性急にワンピースのファスナーを降ろす。
ナナを清楚に飾っていた洋服を取り去ると、舌が首筋や鎖骨を這う感覚に強く反応するように顎と腰を強く反らせた。弾みでぷる、と小さく揺れる柔らかそうな胸を下着の上から食んで、舌先を下着の中に差し込んで先端を転がすと、また身体をびくっと反らして可愛らしく鳴いた。
「―――――ひぁっ……………!」