第85章 逢瀬 ※
約束通りザックレー総統とピクシス司令との面会を終えて、兵団本部を後にしてナナと肩を並べて夕暮れ時の街を歩く。
「エルヴィン団長、今日はありがとうございました。」
ナナが笑顔を向けて私に礼を言う。
「いや、ザックレー総統にもピクシス司令にも挨拶できて良かった。あの二人もまた、ナナのことを特別可愛がっているように見える。まったく、得な女性だな、君は。」
「ふふ、私得してるんですか?それは嬉しいです。」
無邪気に得だ、と笑う彼女はとても幼い。まだわかっていないのか、自分の魅力を。自覚させるように少し、ヒントを与えてみる。
「―――気付いてないか?ものすごく視線が集まってただろう?」
「あ……それは私が兵服じゃないから、みなさん私のことが誰かわからないんだろうなと、思っていました。部外者が兵団本部にいたらそりゃ、見るでしょう?」
「呆れたな。君が美しいから男の視線が集まってただけだ。」
「えっ。」
ナナは想定外だと言う顔でぴた、と歩を止めて俺を見上げる。
「――――君を見ていた男たちは、君になんて言いたかったかわかるか?」
「………いえ。」
俺はナナの手をとって、少し傅いて手の甲にキスを落とした。
「――――麗しいお嬢さん、今晩食事でもご一緒にいかがでしょう?」
「…………!」