第85章 逢瀬 ※
「はい、私は仰る通り兵団にはいませんが―――――、数日間手伝うくらいはできますし、エルヴィン団長の許可が得られるなら――――ぜひ恒例行事にしたいと思います。兵団を支持してくれる民衆も商家も、多いに越したことはありません。」
「エルヴィン、どうだ?」
「もちろん。それを見越しての昨年末の開催でした。継続するごとに規模も拡大し、資金源も増やしていけるでしょう。」
エルヴィン団長の快諾に、嬉しくなる。
ほんの数日だけでも、翼の日の前には兵団に少しだけ戻って―――――みんなに会えるんだ。そう思うだけで、胸が弾んで笑顔になる。
「――――エルヴィン、まったくお前の補佐官は人の命を救うだけじゃなく、兵団資金まで掬い集めて来るんだな。とんでもない優秀さだ。――――私の補佐官にくれないか?」
「えっ。」
ザックレー総統の思わぬ言葉に、びっくりしてしまう。
「………ご冗談を。今は総統の前なので大人しくしていますが――――――とんだじゃじゃ馬ですよ。総統のお手には、余るかと。」
エルヴィン団長が私に意地悪な横目を向けて、ふっと笑う。
「ふん、自分のものだと言いたいならそう言えばいいものを。お前も素直じゃないな。」
「………お見通しですか。」
ザックレー総統もまた意地悪な目でエルヴィン団長を一瞥すると、エルヴィン団長は慣れている様子で目を伏せてかわした。
「当たり前だ。―――――ああそうだ、ピクシスも会いたがっていたぞ、帰りに寄ってやれよ。」
「はい。では私たちはこれで失礼します。ナナ、行こうか。」
「はい!ザックレー総統、お会い出来て嬉しかったです。ぜひ次回はまた一局お相手頂けますか。」
「もちろんだ。」