第84章 奞
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「ねぇナナ、結局ロイがどうやってここまでこの病院を急成長させたのか―――――リカルドからははっきりと語られないままになってしまったけど……、それは物凄く重要なことで……それを知らずに今後の舵をとるのは危険すぎる。なにか……知っていることがあるなら、話して。」
お母様の問に、気持ちが重くなる。
それはそうだ。当たり前だ。
だけど……本人の口からじゃなく、私が言っていいのか。でもきっとロイは言いたがらない………。少しの葛藤をして、私は推測を話すことにした。
「―――――ロイは……手に入れた先の権力者と身体の関係を持ってた………。」
「――――なんですって……?」
「前に、いつもは貴族を相手にしてるって、言ってたから………それも、男女問わずだと思う。ロイはあの容姿だから………手に入れたがる大人は、多かったのかもしれない。そしてそれを、ライオネル家の当主であるダミアンさんも知っている。」
「――――………。」
お母様は絶句した。
そしてハッとしたように、私の腕を震える指先でそっと掴んだ。
「――――まさか……ナナ、ロイがあなたにした、取り返しのつかない事って………。」
「それはもう、聞かないで。無かったことにしたの。」
「…………。」
「―――お願い、お母様。――――ロイにも、何も言わないで。あの子は十分傷ついて、反省して、立ち直ろうとしている。」
俯く私を、お母様はぎゅっと抱きしめてくれた。