第8章 訓練 ※
「………うん。大丈夫ですね。さすが、鍛えてらっしゃるからか……筋肉が衝撃を吸収して、骨や内臓まで響くことはなかったみたいです。でも、しばらくは無茶は控えてくださいね。」
「………ああ……。」
診療を終え、サッシュさんのシャツのボタンを閉じながら伝えると、サッシュさんは力ない返事をした。ふと顔を上げると、至近距離で目線が交錯する。途端にサッシュさんの頬が上気したのがわかった。
「あの………さ………。」
「はい。」
「昨日は………悪かった………。」
思いがけない言葉に、私は驚いて目を丸くした。
「手当て………ありがとな………。」
「私の仕事ですから。気になさらないでください。……私の方こそ、先輩に対して失礼な態度をとったことをお詫びいたします。」
改めて、私も頭を下げる。
「や、そこは………いいんだ、俺が突っかかったから……。」
「さてと、私行きますね。もし夜になって、痛みがひどくなったりしたらいつでも言ってください。あ、もちろん医務室の先生の方が頼りになるかもしれませんけど。」
サッシュさんは最初の印象とは打って変わって、優しい目で私を見送ってくれた。