第8章 訓練 ※
「サッシュさん!!」
「!!お前………。」
「怪我してますね?見せてください!」
「う、うるせぇ…………!してねぇよ……!」
サッシュさんは、なぜか私から逃げようとする。おぼつかない足取りで。容易に追いつき、サッシュさんの腕を掴むと、顔の左こめかみから頬にかけて大きな擦り傷があった。
「座ってください!!」
私は無理やりサッシュさんをその場に座らせると、向かいにかがんで診察を始めた。眼球の状態から、口の中まで、くまなく診る。どうやらそこまでの大きな怪我ではなさそうだ。
ホッとしながら、傷口の手当をする。サッシュさんは気まずいのか、一度も私と目を合わそうとしなかった。
「顔は、これで大丈夫だと思います。後は身体ですね。診せてください。」
「は?!」
「は?じゃないですよ。あれだけのスピードで激突したんですよ。足もふらふらしているじゃないですか。ちゃんと診ないと……顔色を見る限り、大きな内臓損傷はないと思いますが念のためです。服を脱いでください。」
「大丈夫だからマジで!」
「大丈夫かどうかは、私が判断するんです。脱ぎなさい!」
私はサッシュさんの服に、無理やり手をかける。ところどころ痛むのか、激しく抵抗できないようだった。
シャツを開き、そっと身体に触れると、サッシュさんは観念したように抵抗をやめた。私は触診を続けた。時折、サッシュさんの視線を感じた気がするが、診療に集中していたので、目が合うことはなかった。