第84章 奞
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「―――――兵長。」
訓練が終わって、皆散り散りに部屋に帰っていく中、いつぞや俺の部屋を訪ねてきた金髪の女が声をかけてきた。
確か新兵のアリシアといったか。
「アリシア。何だ。」
「――――この前の続きを、したいです。もう一度――――機会をください。」
「…………。」
「愛して欲しいなんて大それたことは言いません。ただ――――、抱いて欲しい……。」
アリシアは頬を染めて、両手を強く握りしめていた。
遊びだとか、俺への些細な興味だとかではなさそうだ。純粋な好意か。
溜まってねぇわけじゃねぇ。が、おいそれと抱いちまって、好意が増幅するなら厄介だ。俺はその好意に応えられない。
兵士長になってからは控えろとエルヴィンに言われたこともあるしな。
何より―――――俺はまだ、他の女を抱きたいと思えねぇ。
「――――ナナさんだと思って抱いて下さってもいいです。代わりでもいい。」
アリシアが発したその言葉に、とてつもなく苛立った。
「――――それはお前が俺に許可することじゃねぇよ。いきがるな。」
「…………!ごめんなさい……。」
そんなにあいつを追ってるように見えるのか俺は。
そんなにあいつを欲してると?
そんなわけない。俺はあいつを手放した。
証明してやろうか。
あいつ以外の女だって、ヤろうと思えば今までみたいに感情もなくただ吐き出すためだけに抱けると。
カッとなってアリシアの腕を乱暴に掴む。
「リヴァイ!!ああこんなところにいた!帰って来ないからさ!!探しに来ちゃったよ!」
その時、素っ頓狂な声が俺を一瞬で落ち着かせた。
俺はアリシアの腕を離した。