• テキストサイズ

【進撃の巨人】片翼のきみと

第84章 奞




「ねぇリヴァイさん。」





その声でその呼び方をされると、嫌というほどお前との日々が蘇る。







「あなたがずっと守ってくれたナナは、ずいぶん強くなったと思いませんか。」





「――――こないだまで心身ともにボロボロだった奴のセリフじゃねぇな。」





「まぁそりゃ……そうなんですけど。でも、戻って来たでしょう?もちろん……色んな人の厚意や思いやりに頼りつつ、ではありますが。」





「――――ああ。」





「――――だから大丈夫です。私は明日からしばらくいなくなるけど……心配しないで。もうきっと――――あなたを乱すことも、ない。」





「――――……そうか。」






「はい。」





「――――なぁナナ。いなくなる前に答えろ。」





「はい。」





「――――お前にとって俺は、なんだ。」





「…………。」







ナナはその問に少し目を丸くして、どこか泣きそうな顔で笑った。







「――――仲間想いで、強く厳しい―――――敬愛する上官、リヴァイ兵士長です。」





「――――そうか。」





「――――………はい。兵士として私を導いてくれて、ありがとうございました。ひとまず一時のお別れです。」





「……ああ、気を付けて行けよ。」





「はい。―――――ふふ………。こんな時にまで――――……やっぱりあなたは――――優しい。」







白銀の髪をなびかせて、ナナは背を向けた。

――――なんてことはない。

いつかこの手を離れて、本当にただの兵士長と部下になるということは分かりきっていた。






ただ時々、その柔らかく微笑む目に俺を映したくなるだけだ。



ただ時々、この腕の中に閉じ込めて、お前の声が甘く俺の名を呼んで―――――お前の笑顔だけを守って、悩ましく俺のためだけに鳴かせたいと思う。ただそれだけだ。



それはただの性欲に近しいものであって―――――、











決して、愛してるからじゃない。



/ 3820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp