第83章 声涙
ベッドでぐったりとうつ伏せになったまま深く早い呼吸を繰り返しているナナに、負担をかけすぎないようにしながら身体を重ねる。
お互いの汗や体液が肌と肌の間で混ざるその感覚が、いやらしくて愛おしい。
時折身体をびく、と痙攣させるナナの背中を、腰から首筋までなぞるように舐め上げていく。白銀の髪をかき分けて露わにした細い肩を、まるで捕食するように噛む。
するとまた顔を上げて、びくんと声にならない声を漏らす。
「――――っ………!」
「……気付いたか?トんでたぞ?」
「……………。」
もう力が入らない、と言った蕩けた顔で俺を見る。
たまらない。
「――――俺はまだ足りないが。」
俺の言葉に、困ったように、少し怯えるように目を潤ませて唇を動かした。
“ごちそうさまでした”
「お腹いっぱいか。なら仕方ないな。」
ふっと笑いが込み上げる。ナナの横に寝転んで、愛しい姿を眺めながら髪を梳く。
「なら約束通り――――俺の泣き事を聞いてもらおうか?」
ナナは眉を顰めて唇を尖らせ、怒っているとアピールしてくる。
「怒ってるのか?約束は果たしているじゃないか。それに―――――君も随分良さそうだったぞ?何回も達していただろう。」
「!!」
顔を赤くして小さな拳でとんとんと俺の胸を叩く。
「それに俺は―――――嬉しい。」
「…………。」
「君の想いが、俺に向いて来ているのを感じる。だから嬉しい。泣き事も、言えそうだ。」
「…………。」
「聞いてくれるか?」
甘えるように言うと、ナナは観念したと言った顔でため息を零し、子犬のように俺の胸に顔を乗せた。
“ずるい”
「はは、今に始まったことじゃない。」
“きかせて”
ナナは柔く微笑んだ。
「――――ありがとう。ナナ。」