第83章 声涙
「違うのか?でも君からも―――――俺を誘う匂いが放たれてる。俺を惹きつけて離さない。」
その首筋に舌を這わせると、ビクッと身体を硬直させて息を荒げる。その合間に、振り返って一生懸命に口を動かす。
“やくそく”
「約束?ああ果たすよ。君も俺も果てた後に、寝物語として。」
「!!」
「――――俺は元々こんなじゃなかったんだぞ?俺を肉食化させた責任はとってもらわないと。なぁナナ。可愛いナナ。やっと手にいれた―――――俺のナナ。」
耳を攻めると、ナナはふぁ、と息を吐いて、俺に身体を預けた。
「――――声を出すことも出来ずに食われる今のナナはまさに―――――被食者そのものだな。余すところなく食べてあげよう。――――おいで。随分身体も良いようだ。手加減なしで、ぐちゃぐちゃになるまで愛したい。」
「――――っ…………。」
「――――これから君が発つまでの数日間、覚悟しろよ。可能な限り抱く。」
ナナの胸元から手を差し込んでその柔らかなふくらみを弄びながら、耳も愛撫する。太ももを撫で上げてやると、その先を期待するようにナナの目が蕩ける。
はぁはぁと激しく息を荒げているその顔が、なんとも官能的だ。
「そうだな――――これも泣き事の一つだ。君に溺れすぎて、困ってる。」
困ったように言うと、ナナは俺の方を振り返った。
知ってるんだ。
君は、俺の困った顔に弱い。
放っておけないだろう?何もかも受け入れたくなるはずだ。
案の定、ナナは背伸びをして自ら唇を重ねて来た。
ほらもうこれで――――――チェックメイトだ。