第83章 声涙
――――――――――――――――――――
風呂から戻ると、ナナはソファに横になってうとうとと眠っているようだった。
洗濯に出そうと思って忘れていたシャツをここに置いておいたのだが―――――と思ってよく見ると、ナナが俺のシャツに包まっている。
「…………。」
寒かったのか?ならベッドで眠ればいいのに……と思っていると、うっすら目を開けたナナが、身体を包んだ俺のシャツに顔をすり寄せて、すんすんと鼻を鳴らした。
「………ナナ?」
「――――………?!?!」
幸せそうに微睡んでいたナナの薄く開いた目と俺の目が合うと、ナナは急に目を見開いて、真っ赤になって勢いよく起き上がった。
あわあわと目を泳がせているナナに、声をかける。
「何を飲む?ワインでも開けようか。ああ、食べるものは用意してくれたんだな。」
「…………!」
「グラスを取りに行こう。」
ナナはどこかホッとした様子で、ささっとシャツを畳んでソファの隅に置いて、俺の私室にワイングラスを取りに行った。
俺はまるで獲物を狙う肉食獣にでもなったような心境で、その後を追う。
可愛らしく戸棚の前で背伸びをしながら上段に右手を伸ばす捕食対象を後ろから抱きしめて、その右手の指も絡めとる。
「!!!!」
「――――――なぁナナ。俺がいない間に、俺のシャツで何をしていた?」
「…………!」
耳元で囁くと、ナナはぶるっと身を震わせた。顔がみるみる赤くなり、体温が上がって鼓動が早くなっていっているのがわかる。
「――――嬉しい誤算だ。したいのなら、そう言えばいいのに。」
「~~~~~!!!」
ナナは勢いよく首を横に振る。