第81章 落月屋梁
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―――――ふと通りがかって、ナナの自室の扉が開いているのに気付いた。そういえばエミリーが花を置いてやっていたが、閉め忘れか?と思い、中を覗く。
暗闇だが窓辺には月明りが差し込んで、誰もいないはずのリンファのベッドに、誰かが伏している。
誰か―――――、あいつしか、いねぇだろう。
俺は部屋に入ってリンファのベッドに歩を進めた。
「―――――なにしてる、ナナ。」
「―――――………。」
寝てやがる。
顔を覗き込むと、涙の跡がある。
お前の泣き顔を見ると、苦しくなる。リンファを失った悲しみは、俺にもエルヴィンにもどうにもしてやれねぇ。お前が自分で立ち直るしかないんだ。
それを、しようとしてここに来たのか。
「――――仕方ねぇな。」
眠るナナの横にギシ、と音を立てて腰を降ろす。そしてその髪を撫でる。
俺が守らないと生きてすら行けない、無力でか弱い、守られるだけのお前も悪くない。だが―――――、やはり違うんだ。
その強気な目と、めげない力強さと、強い意志と――――俺を惑わすその声を、早く取り戻せ。
時折うなされるナナを、それを宥めることを口実に抱き締める。
この眠り姫を守る男になりたいと、いつの日か思ったことを思い出す。
「――――リヴァイ。」
ナナを運び込んだ俺を見て、エルヴィンが驚いた顔をする。
「――――落ちてたから、届けに来てやった。」
「はは、どこにだ?」
「―――――リンファのベッドだ。」
「――――……そうか。すまないな、ベッドに寝かせてやってくれるか?」
「ああ。」
エルヴィンの私室のベッドにナナを寝かせる。扉を閉めて、エルヴィンに様子を聞いた。