第8章 訓練 ※
一人ひとりに声をかけながら、大半の兵士を見終わったところで、サッシュの番が来た。
「どけどけぇーーっ!!」
黙って飛べねぇのか、あいつは。
うるせぇながらも、あの体格の割に移動速度が速い。
だが、ガスをふかしすぎだ。戦闘能力は秀でているが、立体機動の使いこなしに関してはまだまだだ。
俺は立体機動で気配を消したまま静かにサッシュに近づいた。すぐ後ろに付けたが、奴は全く俺に気付いていない。俺は追い越すその瞬間に、サッシュの耳元で声をかけた。
「……ガスをふかし過ぎだ。」
「ひっ?!」
サッシュは驚きのあまり、立体機動の操作を誤り、木に衝突した。
「ぐえっ………!げほっ、げほっ………」
「訓練で良かったなサッシュ。壁外なら今頃、巨人の腹の中だ。」
サッシュが涙目で俺を見上げた。まぁこのくらいで身に染みただろう。
「十分休憩だ!」
息を上げる兵士達は、一斉に水分の補給に向かった。俺はナナの現状を確認するため、ナナバに声をかけた。
「ナナバ。」
「リヴァイ……兵士長。」
ナナバは律儀に敬礼をする。
「ナナの様子はどうだ。」
「それが……。」
辺りを見回すと、立体機動装置を身に着けアンカーを打つ練習をしているナナの姿が目に入った。
「……驚いたよ。一度も立体機動について学んだことはないと聞いていたんだけど。」
「ああ。そのはずだ。どうした。」