• テキストサイズ

【進撃の巨人】片翼のきみと

第80章 喪失




「無理なら俺の私室で預かろう。」

「えっ!」



私が驚いたのと同時に、ハンジも思わず声を上げた。



「――――俺が毎回口移しで水を飲ませて、飯も食わせてやる。毎日隅々まで身体も拭いてやるし―――――、そうだな、俺はあいつの体温があれば良く眠れるし好都合だ。」

「ちょっとリヴァイの言い方がエロすぎて私は心配だけど?」

「いいんじゃないか?エルヴィンに比べればリヴァイの方が手は空くはずだしな。兵団外に出ることもリヴァイの方が少ないだろう。」

「―――ちょっとミケ、安易にそんな。絶対リヴァイが食べちゃうって、ナナのこと。ダメだって、この人ほんと見境ないから。前に私の研究室でも――――――いてっ!!」



何か言いかけたハンジの頭をリヴァイがはたいて、また私に目を向けた。



「――――まぁ、お前が決めろよエルヴィン。俺に預けるか、どうか。」

「―――――………。」



私が躊躇した理由を、リヴァイは分かっている。

一歩間違えば命の危機に瀕するほどの怪我を負ったナナを見るのが―――――怖い。あの刺傷でさえ、その姿を見た時に取り乱した。今の彼女を見て自分がどうなってしまうか、想像もできないからだ。調査後の処理等々を理由に、まだ見舞ってもない、薄情な男だ。

私の私室で預かることを躊躇するのは、見ているのが痛々しいからというだけではなく―――――相対する時間が長ければ長いほど、二度とこんな目に合わせたくないという思いが芽生える。

そうすれば俺は―――――“団長”としての俺でいられなくなるかもしれない。もしくは、ナナの意志を全て無視して籠の中に閉じ込めようとするのかもしれない。

リカルドさんに忠告が頭をよぎるが―――――逆だ。ナナの影響力が強すぎて、団長としての仮面を維持できないかもしれない。



「――――少し、考えさせてくれ。」

「は………群を抜く決断力を持つお前が、珍しい。そんなに揺らぐか。」

「―――――………。」



リヴァイの煽りをかわすこともなく、目を伏せた。

/ 3820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp