第80章 喪失
調査翌日の幹部会では、長距離索敵陣形のこれ以上の改良余地はない、これで確立すべきだと4人全員の意見が一致した。
―――――天候に大きく運命が左右されるのは、今に始まったことではない。
長距離索敵陣形の確立は今後の調査の糧になりうるはずなのに、その場の空気が重苦しいのは―――――失ったものもあまりに大きかったせいだ。
「――――ナナの意識は戻った。一先ずはナナの部屋に戻らせて、医療班に交代で看てもらうことにしよう。起き上がれるくらいに回復するまでは、王都に戻ることもできないだろうしな。」
「――――部屋に帰らせないほうが、私はいいと思う。」
ハンジが口を開いて、ミケが同意した。
「俺もハンジに同意だ。リンファを亡くしたナナが―――――、あの誰もいない部屋で1人でいると、精神面で壊れかねない。」
「――――そうか、それは……そうだな。」
「私が預かろうか。」
「やめろハンジ、お前の汚ねぇ部屋じゃ余計に悪くなる。」
「リヴァイ酷いな!掃除するって!」
「―――医務室でまだしばらく預かってもらえばどうだ?」
「あぁそっか。」
ミケの提案に、ハンジが手をぱん、と叩いてそれもそうだと示す。が、リヴァイが何やら言いたげだ。
「どうした、不都合があるのか?リヴァイ。」
「――――ナナが大けがしたとなりゃ、色んな奴が見舞う。あいつはそれに笑顔で大丈夫だ、大丈夫だと言って―――――、本当は全然大丈夫じゃない、抑え込み続ける………それが目に浮かぶ。」
「――――……さすがリヴァイ……ナナの元保護者なだけあるね。絶対そうなるよ……。」
「―――……本当だな。それは、良くない。」
リヴァイが腕を組んで、私をじろりと見上げる。
「おいエルヴィン、お前の私室で預かれねえのか?」
「なに?」
「執務しながら気にもかけてやれるだろう。それに、執拗な見舞いも来ない。うってつけじゃねぇか。」
「………まあそうだな。だが――――……。」