第80章 喪失
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リヴァイが本隊に戻って来たその姿を見て、全身の血が凍ったのかと思うほどに体温が下がり、身体と思考が凍てついていくようだった。
血まみれで、意識のないナナを抱いていたリヴァイが一言、『ナナは生きている。だから取り乱すな。このまま壁内へ帰るまで導け。』と告げた。
奴の言う通りだ。
私がやらなければならないことを見失っては元も子もない。
隊の再編成をしてから数時間後、帰着を果たした。
総員195名、死者31名、重傷者12名、軽傷35名。
目標の物資運搬は達成した。
あの一時の試練のような荒天がなければ、死傷者数はもっと少なかっただろう。医療班の活躍は目覚ましく、大事に至る前に処置をした仲間が何人も助けられた。
あの荒天の中で新兵を中心に混乱をきたし、先陣を切って戦ったベテランの兵士が多く命を落とした。
中でも―――――、班長を任せるほどの実力だったロキとリンファを失ったのは大きい。それに医療班のナターシャも。
ナナは肋骨を数本骨折、右肘の脱臼、左前腕の骨折、全身打撲と重傷者の中ではまだ軽い方ではあった。巨人に掴まれ、その小さな身体を骨が折れるほどに締めつけられたのだと聞いた。
粉砕骨折に至っておらず、折れた骨が内臓に干渉したりしなかったことが幸いで、他の重傷者ほど即入院、兵士としての再起は不能というほどではなかった。リンファが、ナナを自らの命と引き換えに守ったからだ。
命を奪われることはなかったが――――目の前で親友だったリンファを亡くした。その心の傷のほうが深いだろう。
現実に相対したくないとでも言うように眠り続けるナナの意識が戻ったら、なんと声をかけてやればいいのか。