第79章 試練
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―――――あんたを守るのは、あたしの役目だと、ずっとそう思ってた。
クソ生意気で甘い戯言をぬかす、最初の印象は最悪だった。
だけどいつでも一生懸命で、自分の出来る事をやろうとしていた。暴力にも力にも屈せず、傷ついても何度も何度も立ち上がってくるあんたをすごい奴だと思うのに、時間はかからなかったんだ。
今まで秘めて来た昏い過去を、初めてあんたに打ち明けた。一緒に泣いて、抱き締めてくれて―――――そうだ、あたしは11歳のあの頃、母親にこんな風にして欲しかったんだ。
初めて友達と出かけて、初めて外食をして、初めてお揃いの飾りをつけて――――――、初めて、恋の話をした。あんたがあたしを”初めての親友だ”と言った時、あたしはどれほど嬉しかったか知らないだろう。
あたしを守るために決して言えないと言った秘密は、エルヴィン団長と共有しているのかな。どうせあんたのことだ。とても危険な―――――でも希望に満ちた、そんな話なんだろう。
あたしは一度あんたを責めてしまったけれど、あんたが選んだ生き方なら応援したいから。エルヴィン団長と、上手くいくことを願ってる。
だけど――――――いまだに兵長があんたのことを愛おしそうに見ていることにも、少しは気付いてあげてほしい。
―――――サッシュは、あたしが死んだら泣くかな。
サッシュが泣く時にはいつも側にいて、やけ酒に付き合ってやるのはあたしの役目だったから―――――他にそんな相手がいなくて、1人で泣くことになるなら、泣かないで。
早く忘れてしまっていい。
また好きな子ができて―――――今度こそ幸せになってくれたらいいな。
だけどアーチのことだけは、どうか助けてやってほしい。まぁサッシュはいい兄貴だから、心配ないか。
――――あたしは、本当に、幸せだった。
遠目に、兵長が駆けて来るのが見えた。
もう、心配ない。
あたしは時間稼ぎしかできなかったけど――――――
兵長、どうかナナを守って。
―――――――雪が舞ってる。
ねぇナナ、あんたのおかげであたしは雪も自分も好きになれた。
あんたが悲しまないように、この雪が私の血も亡骸も全て覆い隠してくれたらいい。