第79章 試練
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生まれて初めて、自分にこれからもたらされる『死』を覚悟した。走馬燈のように駆け巡るのは、リヴァイさんとの日々と、エルヴィンに愛された記憶。そして調査兵団のみんなとの思い出と、ワーナーさん、そして家族のこと。
身に余る幸せだった―――――と、諦めるのはまだ早い。
「死ぬまで、諦め、ないって……決めた……!」
右手のブレードに左手を添えて、渾身の力で巨人の口元をめがけて振りぬく。
多少の傷は負わせられても、一瞬その動きを止めただけで効果はなかった。むしろ、その手に力が込められた。
「―――――う"あ"ぁぁあっ………!」
パキ、と自分の身体の骨が折れる音がする。
激痛と恐怖で、どうにかなりそうだ。さすがに、もう、駄目かもしれない。
立体機動のワイヤーを激しく巻き取る音と、ガスをものすごくふかす音が聞こえた。
巨人の口に運び込まれそうになった時――――――その項を、リンファが華麗な剣裁きで削いだ。
けれど、ほんの少し侵入角度が悪かったのか―――――巨人の目がじろりとリンファを捕らえて、よくもやったな、とばかりにぐるんと顔の向きを変えてリンファに食らいついた。
「―――――くそっ……!」
リンファは咄嗟にその口を閉じられないようにブレードを立てた。ぎり、ぎり、と徐々に圧力が増していく。
「リンファ、だめ……!!私はいいから、刃を外して逃げて!!!!!!」
このままだと、リンファまで危険に晒すことになる。