第79章 試練
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ああ、立体機動を練習しといて、本当に良かった。
満足に戦えない私が、ブレードに刃も付けることすらできなくなった私が立体機動もできなかったら――――――ただの巨人の餌でしかない。
「結構、練習したんだから……っ……!大丈夫……!」
ここは平地で、障害物はない。
あったとしても、吹雪でそれを捕らえられない以上、動き回るこいつにアンカーを刺して――――――なんとかかわすしか、ない。
………こいつにとりついていても、倒せない私はいつかガスが無くなるか――――――掴まれて食われるのか。
わからないけれど。
やるしかない、やらずに諦めてたまるか。
巨人がその手を伸ばしてきた、肩に向かってアンカーを刺す。
左手がこんな状態での立体機動の実践が、まさか巨人と一対一なんて。ついてない、そう思うとなんだか笑えてくる。
でも大丈夫―――――リヴァイ兵士長が認めてくれたくらい、私は使いこなせるんだから。
ワイヤーを巻き取りながら、その肩付近に移動する。初めて巨人の肩に足をおいて、とん、と着地する。至近距離でぐるん、とその顔がこちらを向いて、大きな口を開けてばくん、と食らいついて来る。
「うわぁっ……!!そりゃ、そう、だよね……っ!!!」
ガスをふかしつつその肩から離れると、すぐに次のアンカーを撃たなければならない。この高さから着地なんて、不可能だ。
一瞬私を見失ったように背を向けたやつの背中にアンカーを刺して、なんとか脚の腱を狙えないかとワイヤーを巻き取って近づく。
が、その瞬間―――――急にやつが方向転換をして、その脚にワイヤーが巻き込まれた。