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【進撃の巨人】片翼のきみと

第79章 試練






「―――――!!!!!」



何とか手綱を思い切り引いて、右にかわしたそれは―――――確かに巨人だ。視界が悪くてちゃんと認識できないけれど、8~10mくらいだろうか。

全身の毛穴から、嫌な汗が噴き出した。

その“人間を食う事”しか意志のない目をにたりと細めて、長い手を再び私に伸ばしてきた。



「―――――リンファ、気を付けて!!!巨人がいる!!!」



立体機動に移りたくても、ここはおそらく平地だ。アンカーを刺せる場所が無いはず。馬から降りてしまえば、私は終わりだ。

巨人が伸ばした手が、私の愛馬の足元を払った。



「きゃあぁっ!!!」



愛馬と共にがくん、と体勢が崩れ、私はその場に投げ出された。何とか受け身をとったものの、拭き荒む吹雪の中、どすん、どすんとその足音が近づいてくる。

私はただ、その生き物を見上げた。

リンファの声はしなかった。私に釣られてこいつが来たおかげで、リンファや他のみんなは先に進んだはずだ。その時、隊が進行しているであろう前方の方角から緑の信煙弾が数発同時に撃たれたようだった。




エルヴィン団長が、進めと言っている。




それを理解できるだけで、こんなにも心強い。




良かった、隊はなんとか形を保って帰還に向けて進んでいるんだ。

そんな中、じゃあ―――――私はこれから、この絶望的状況をどう、切り抜けようか――――――。




迫りくる巨人に対峙しながら、震える身体を抑えて、ごくん、と生唾を飲み込んだ。


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