第78章 抗
「例え今回調査に出られずとも、お前が降りようとも誰もお前を責めねぇし、嫌わねぇ。むしろ意地になって無理矢理身を削ってるのを見てるこっちの気持ちも考えろ。………なんでハンジやミケ、サッシュやリンファがお前を1人にしないと思う。」
「…………それは……。」
「心配されてんだお前は。大事なんだお前が。」
「――――………。」
ああそうか、みんなが“なぜ”来てくれるのかなんて、考えてもみなかった。
集まってくるのがあまりに自然なことで―――――、私はまた自分のことばかりで―――――、そうか、私を心配して来てくれていたのか。
そんな今さらなことに、言われて初めて気が付いた。
「俺達が大事にしているものをお前がないがしろにするな。自分を労われ。ちゃんと。」
「――――はい………。」
「行くぞ、飯だ。」
ぶっきらぼうに顎で兵舎を示して、背を向けて歩いていく。
うちの兵士長は本当に愛想が悪くて、乱暴で、口が悪くて、短気で――――――、みんなのことを誰よりもよく見ていて、厳しくて、優しくて、ちゃんと叱って導いてくれる。
この人のこんなすごいところが、“兵士長”という立場で如何なく発揮されていることが、とても誇らしくて嬉しい。
私が独り占めすべきものではなかったんだと、きっと私の決断は間違ってないと、そう思える。
私がここからいなくなる期間で――――会えない時間で、この人はもっとずっと凄くなる。
それがとても楽しみで、切ない。
「――――はい!」
私は愛する上官の背中を追った。