第78章 抗
――――――――――――――――――――――
――――左手の中指と、人差し指が動かない。
いや、ほんのわずかには動くけれど、とても立体機動のトリガーを引けそうにない。
持ち方を変えるしか……そう言えば西部調査の時、巨人の項を削ぐリヴァイ兵士長が左手だけを逆手に持っていた。リヴァイ兵士長と同じことができるとは思い難いけれど、機能的に、物理的に不可能ではないってことだ……。
あと2週間で、使えるように、ならないと……。
訓練後、みんなが立体機動装置を片付けて食堂に向かう。私は次の壁外調査までに左手をどうにかしないといけなくて、訓練場でブレードの柄を逆手に持ってアンカーを射出する練習をしていた。
「………っ固い……!」
中指と人差し指ではなんなく引けたトリガーが、薬指と小指の力ではうまく引けない。
咄嗟の判断で操作を問われるのに、こんなことでは到底―――――壁外に連れていっては、もらえない。
心が沈んでしまいそうになる。
こんなことではだめだ、行くと言った以上、足を引っ張らない。それが最低限の条件だ。まるで違う持ち方を考える。最悪、刃を装着しなければどんな持ち方であっても操作さえできればいい。
どうすれば……と考えていた瞬間、私の横にとん、と小さな着地音を立ててその人が降りたった。
「リヴァイ兵士長。」
いつもいつもこの人は気配なく真横や真後ろにいるから、本当に心臓に悪い。
「――――指を満足に動かせねえなら、立体機動は無理だろう。大人しく留守番してろ。」
「いえ、行くと決めたので。だから動かせる指でなんとかしようとしています。リヴァイ兵士長に倣って逆手で持ってみたんですけど……力が入らず駄目で……。」
「なら諦めろ。」
「嫌です。」