第78章 抗
「まあブレードを逆手に持ったとしても、ナナは戦闘に当たらせない。立体機動のトリガーを引くだけなら、たしかに逆手でも不可能ではないがな……。」
「どうせ体力も削って今からめちゃくちゃ訓練する気だよあの子……!」
「だろうな。――――私が言うと反抗するかもしれないからな、気にかけてやってくれ。」
「え?」
「反抗期なんだ。」
「反抗期?!ナナにそんなのあるの?!」
ハンジは興味津々に私の顔を覗き込んで面白おかしいといった表情で笑う。
「いや、私が悪いんだが。言い分を聞かずに彼女を否定したからな。嫌いだと言われた。」
「マジで?!嫌いとか言うの?!ナナが?!」
「ああ、結構落ち込んだ。――――まあ、嘘だと言ってはくれたが。」
「なんだよそれ結局惚気じゃないか。」
「そう聞こえるならそうなんじゃないか。」
ふ、と小さく笑みを零す私を、ハンジがどこか嬉しそうに見つめて笑う。
「――――エルヴィンは……調査兵団とナナを、何食わぬ顔でそつなく両立して守るんだと思ってたよ。でも――――……意外に苦労してそうで、私はそれを見てるのが楽しい。ナナに振り回されるエルヴィンは、人間らしくてとてもいいよ!」
私の気も知らないで、ハンジはひひ、と悪戯に笑う。だが不思議とそれも心地いい。
「人間らしくて……か、元々の私の印象はどうなってたのか、聞くのも怖いよ。」
「えっそんなの、冷徹で血の通ってなくて計算高い任務遂行マシンみたいだなって。」
「言い方に配慮が無さすぎるな。私も一応傷つくこともあるぞ?」
「――――こんなくだらない会話をエルヴィンとできるようになったことも、私は嬉しい。ナナに――――感謝しなくちゃ。」
ハンジは力強く私の背中をばん、と叩いて笑った。
「ナナの様子見は任せといて!無理しすぎないようちゃんと見とく。――――はは、エルヴィンはまるでナナのお父さんみたいだね。」
「――――それが、厄介なんだ。」
「ん?なんか言った?」
「いいや、なんでも。宜しく頼むよ。」