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【進撃の巨人】片翼のきみと

第78章 抗




何とか議会は終わって、各々が散り散りになったその時、ピクシス司令が声をかけてきた。



「――――エルヴィン。ナナはそんなにひどいのか?」

「ピクシス司令。――――ええ、痛ましいです。何より―――――彼女は医者なのに……手に後遺症が……残らないといいのですが。」

「――――そうか……。見舞いの品でも届けようかの。彼女が好きなものはなんだ?」

「ありがとうございます、では甘味を。とても喜びます。」



ピクシス司令がにこやかな顔で隣の補佐官に合図をすると、補佐官が頷いた。そしてまた私のほうに目を向けると、その目はニヤリと細められた。



「それはそうと、中央憲兵に喧嘩を買う宣言をするとは、お主も馬鹿と言うか……豪胆というか……若いというのはいいのう。」

「好きで喧嘩腰なわけではありませんよ。私は平和主義者です。」



はは、と笑ってかわそうとするも、ピクシス司令の目は誤魔化せないようだった。



「――――中央憲兵に目をつけられたのがナナでなくとも、お主は同じように振る舞ったか?」

「―――――………さあ、どうでしょう。」

「儂の予想では――――、ナナでなければ、もっと聡く小回りを利かせた対応をしとったと思うぞ。」

「―――――………。」

「いや、責めてるんじゃない。儂はそんなお主の方が好きだからな。冷徹で冷静で――――感情など置き去りにして全てを割り切れる男には、そそられん。今のお主はなかなか人間臭くて――――、内から滾る熱を持て余しているもどかしさが、悪くない。若い証拠だ。」



何からなにまでお見通しか。

兵団の中で最大の数千人の兵士を抱える駐屯兵団をまとめ上げるに相応しい人心の掌握術と、人を惹きつけるその魅力には感服する。



「………ピクシス司令にそう言っていただけるのなら、光栄です。」

「はは。じゃあの、ナナにくれぐれも大事にと伝えてくれ。」

「はい、必ず。」

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