• テキストサイズ

【進撃の巨人】片翼のきみと

第1章 出会




それから何度か、時計塔で他愛もない話をした。

彼の優しさがそうさせるのか、会話がない時間さえも居心地が良かったのを覚えている。

私が読書をしていると、ワーナーさんは小さな声で優しい歌を口ずさむ。聞いたことのないメロディに、聞いたことのない言葉をのせて。



「聞いたことのない言葉ね。なんて言ったの…?」

「………彼らはやがて、無限の自由と希望を手にするのだろう………なんて素晴らしい世界だ。」



ワーナーさんから紡がれる言葉は、暖かい。



「素敵ね。」



私は目を輝かせていただろう。

彼の口から紡がれる滑らかな言葉は、私を魅了していった。彼の口ずさむ歌を、すっかり覚えてしまうほどに。

その言葉や異文化への興味は抑えきれず、私はついにワーナーさんの家にまで上がりこむようになった。

地下街へ行くのは少し怖かったが、なんてことはない。ワーナーさんの家で、見たこともない書物に記される外の世界に思いを馳せるのが、何よりの楽しみだった。



ある日、私はワーナーさんを驚かせたくて、彼がいつも口ずさむ歌を、少しアレンジを加えて披露した。歌は得意だったから。

ワーナーさんは、目を丸くしていた。



「………どうだった?」



照れながら感想を問うと、ワーナーさんは見たこともないような笑顔で頭を撫でてくれた。



「………驚いた。まるで天使の歌声だ。ナナは、歌手を目指しているのか?」

「ううん。歌は好きだけど………私は、医者になるの。」

「医者?」



ワーナーさんは、輪をかけて驚いた表情を見せた。

/ 3820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp