第77章 己己
「リヴァイが今更人を殺す度にいちいち自分を責めているとでも?」
「――――………。」
「地下街で何人殺してきたと思う?俺があいつに出会った時にはもう、相当な人数だった。それが当たり前の世界でもあったからな。マシューのことだってそうだ。必要とあらば、容赦なく殺せる。それくらいの覚悟も経験も能力もある男だ。」
「…………倉庫での時は、エルヴィン団長が、リヴァイさんを―――――止めたじゃ、ないですか………。」
「―――兵団内でのいざこざで兵士長が兵士を殺したとなればどうなる?調査兵団そのものの評価に大きく関わる。それを避ける必要があった。今回は部外者が兵士を私欲で襲った。例え殺しても―――――、正当防衛として主張できる。」
「――――――…………。」
「それに、君のおかげでリヴァイは的確で後々の兵団のことまで考えた“兵士長らしい”判断をするようになった。あいつが殺すと判断したのなら、私は止めない。共にその業を負うまでだ。」
――――前から不思議だった。
深く傷ついた時、胸が痛くなるのはなんでだろうって。
感情は脳が司っているはずなのに、痛むのは決まって胸だ。
心臓に、少なからず“こころ”というものが宿っているのかとさえ思う。
それほど―――――胸が苦しくて、痛くて、張り裂けそうだ。
「――――君の制止によって、リヴァイはビクターをまた生かしたんだと聞いたが――――なんとも甘い。私なら、君がいくら止めようとも確実に息の根を止めていた。」
「――――……もう、やめて……聞きたく、ない……。」
痛い。
頬も、掌も、腿の傷も。
そして、心も。