第77章 己己
「あの日リヴァイを止めなければ―――――……、ビクターの息の根を止めていたら―――――……、こんなことにならなかった。」
エルヴィン団長のその目の奥の青白い怒りの炎にゾッとする。
人の命を絶っておけば良かったなんて言える人だと思いたくなかった。
そして―――――なによりそれを、リヴァイさんにやらせようとしたのなら―――――どうしても赦せない。
「――――今回も、リヴァイさんに……指示、しましたか……?殺せって……。」
「――――殺せとは言ってない。『やりすぎても』責任は俺がとるとは、言った。」
「あなたのそれは……っ!!殺せと、言っているのと同じです!!あそこまで全てを読み切っていたあなたが、私を傷付けたビクターさんをリヴァイさんがどうするか……っ……、わからないはずがない………!」
私の訴えに、エルヴィン団長も珍しく感情的な表情を見せた。
「だとしたら?」
その目と威圧感に、身体が硬直する。
―――――怖い。こんなに、怖い人だったのか。
「………っ………!」
「君が私を責めるのか?リヴァイを守りたいから?リヴァイに人殺しをさせたくないのは君の幼稚なエゴだ。君は、自分のせいで誰かが死ぬことで自分を責めたくないだけだ。それでなくても自責の癖がある君が無意識に身につけた、自分を守る術じゃないか。」
「違う……!人を殺して―――――、リヴァイさんが自分自身を責めるのが、嫌なんです……!」
「――――はは………。」
エルヴィン団長は小さく、笑った。