第77章 己己
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「――――ナナ!!!大丈夫?!よく戻ったね……!」
門まで迎えに来てくれたリンファが、ギュッと私に抱きついて来た。
「リンファ、ただいま。って……ちょっとだけ痛い。」
「あっ、ごめん!!」
私が笑うと、リンファも笑ってくれた。リンファはリヴァイ兵士長に向き直ると、しっかりと頭を下げた。
「兵長、往路の警備はあたしの仕事だったのに――――ありがとうございました。」
「いや、事情が事情だった。気にするな。……おいナナ、荷物を置いたらすぐ団長室へ行って報告しろよ。大層心配してるだろうからな。」
「はい!」
左足を踏み出すとやっぱりまだ少し痛くて、ひょこ、と庇うような足取りになる。それでも随分問題なく歩けるようになったのは、リヴァイ兵士長がものすごく過保護にしてくれたおかげかもしれないと思うと、ふふ、と思わず小さく笑ってしまう。
団長室をノックすると、聞き慣れた穏やかな声で返事が返ってきたかと思うと、私が触れなくてもその扉が開かれた。
いつも私が開けて入室して、机で仕事をしながら目線を上げてくれるのだけど、わざわざここまで来てくれたことから、心配をかけたんだろうと想像ができた。
扉の向こうに見えたのは、複雑に淀んだ蒼い瞳だ。
「ただいまもどり―――――」
言い終えないうちに背後の扉を性急にばたん、と閉められて、身体が浮くんじゃないかと思うほどに強く強く私を抱き締めて、エルヴィン団長は私の首筋に顔を埋めて長く息を吐いた。
「ちょっと、あの、痛いです……!」
「――――ああ、悪い……でも、離せない。」
ほんの少しだけ腕を緩めてくれたものの、全く解放してくれる気配はない。
顔をむぎゅ、と埋める形になってしまったその逞しい胸から、驚くほど速い鼓動が聞こえる。