第77章 己己
「私、好きなんです。エルヴィン団長とリヴァイ兵士長が、作戦の話や――――調査兵団の話をされているところを見るのが。お2人が一緒にいると、強さや引力が何倍にもなって―――――その背中について行きたいと、同じ夢を見たいと心から思えるんです。お互いを補完し合って高め合う――――そう、まるでお互いの片翼のように。空を駆けるために必要な存在……私も、そう、なりたかったですが……。おこがましいですね。」
ナナはとても嬉しそうに、俺たちのことを語る。
別れを告げたあの日の夜にナナが言った、俺の中に溶けてしまって、エルヴィンと同じ夢を見たいと言ったあの言葉の意味を、俺はより深く理解した。
「わかりにくかったですか?ごめんなさい。どう表していいかわからないです。あと5時間くらいその素晴らしさについて語りたいです。」
「いや、十分だ。なにが5時間だ気持ち悪ぃ。ハンジかお前は。」
俺の悪態に、ナナは眉を下げて満面の笑みで大きく笑った。
「―――エルヴィンも言っていた。俺のことを、戦友だと。」
「それは、心から信じているという意味です。信じていない人に、背中は預けられませんもんね。」
「――――……。」
「リヴァイさんにとっても、エルヴィン団長は戦友ですか?」
「――――いや、お前の言った通り……ほんの少しの主従関係を含めてる。癪だがな。」
「――――でも、信じて、認めているんでしょう?」
「そうだな。」
――――じゃなければ、信じるに値しねぇ男なら、意地でもお前を渡すかよ。と言いかけて、飲み込んだ。
「――――そんな2人だから、私は―――――……。」
ナナが俯いて何かを言いかけて、俺と同じくその先を飲み込んだ。
「――――あの七三が首を長くして俺達を待ってるからな。帰るか。」
「はい!」
俺たちは馬を駆って、兵団への岐路についた。