第77章 己己
なんとか荷物をまとめ終えて、腿と掌の当て布と包帯を替えておこうと、ベッドの上で身を捩ってズボンを脱いだ。
もう随分出血は落ち着いたものの、長時間馬を走らせることになるから、傷が開くかもしれない。
本当ならお母様にお願いしたいところだけど、今日も引き継ぎや会議への参加のために朝早くから家を出ている。ロイには頼みにくいし……ハルはきっと私に残る傷跡を見たら、泣いてしまうか気を失ってしまう気がする……。
うまく動かない左手をなんとか器用に使いながら、左の膝を立てて、腿の包帯を取りかけた時、扉が鳴ったと同時に扉が開いた。
「――――おいナナ、準備でき―――――」
「うわぁっ!!」
下半身が下着だけの状態で、脚を曝け出している時に―――――なんでこのタイミングでリヴァイさんが入ってくるの……。
心臓がどくどくと強く鼓動し、また傷がズキズキと痛む。
なのにリヴァイさんは一向に目を伏せたり、まして出て行こうとする様子もない。一瞬驚いたような顔をしたけれど、そのまま無遠慮に歩を進める。
「ちょっ……!見てわかりませんか、今包帯、替えてるので……!出てってください……!」
「あ?なんだ、替えりゃいいだろうが。」
「いや、こんな格好なんですから察して出て行くでしょう、普通……!」
とにかくブラウスの裾をなんとか無理矢理引っ張って、少しでも隠そうと試みても無意味だ。
「――――何を今さら。お前の恥ずかしい恰好なんてもう知ってる。」
「それとこれとは違いますし、言わないでください!モラルもデリカシーもないんですか……!」