第76章 束間
「――――あははっ!」
「なにがおかしい。」
「だって………食べないものをこんなに買わせるなんて、おばさんは本当に商売上手だし――――、リヴァイさんが断りもせずにそれを全部買っちゃうのも、意外で面白くて……!」
私はすごく、笑った。
なぜか、とても嬉しかったから。
人の命とか、使命とか、そんな大層で重たいものに苛まれることなく、好きな茶葉を選んで――――、お店の人と話して、好きでもないものまで買ってしまう。
そんな普通の人によくあるのであろう日常が私たちにも―――――リヴァイさんにもあるという事が、とても嬉しい。
「――――久しぶりにお前がそんなに笑うのを見た。」
「……はは……そうでしたっけ?」
「可愛い。」
「!!」
急に何を言いだすのか………心臓が、跳ねた。
「食えよ。疲れが癒える。」
「えっ、せっかくだから紅茶と一緒に食べた―――――ん、ぐ。」
そう言ってリヴァイさんは、小さな包みのクッキーを開けて私の口に押し込んだ。
「うまいか?」
「……はい。とても!リヴァイさんも食べてみればいいのに。甘い物、美味しいですよ?一口食べたら、好きになっちゃうかもしれませんよ。」
まるで雛鳥に餌付けでもするかのように、リヴァイさんはまたクッキーを私の口に押し込んだ。
「――――なら試してみよう。」
「―――――……?」
リヴァイさんの発する色気に身体がびく、と反応したかと思うと、がぶりと唇ごと齧りつかれて―――――口の中で解けた甘い甘いお菓子を、舌で絡めとられる。
顔を背けようとしても、場所が悪かった。
ここはベッドで――――、簡単に手首を掴まれたまま、そこに押し倒されて逃げ場を失う。体温が上がって―――――、掌の傷も腿の傷も、私の激しい鼓動と共に疼痛が引き起こされる。
痛みに僅かに息を漏らすと、察したのかようやくその唇は離された。