第76章 束間
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病院の事をおおよそ引き継いで、相続の手続きなども済ませて家に帰るころには、日が暮れていた。
馬車が門前につくと、リヴァイさんが門前まで迎えに来てくれて、軽々と私を抱き上げた。そう、ずっとこの調子だ。
朝、馬車に乗るまでも私を一切歩かせない。
とんでもなく過保護すぎて、初めてこんなリヴァイさんの一面を知って、思わず笑ってしまう。
恥ずかしいのでやめて、歩けますと言っても、『動かさねぇほうが早く治るに決まってんだろ』と一蹴されてしまう。その様子をあらあら、仕方ないわねぇと言う顔で微笑む母とハルに対して、ロイだけはずっと面白くない顔をしている。
私の部屋に入ると、テーブルの上に大きな紙袋が置かれている。
「??これ、なんですか??」
「――――茶葉の店に行った。」
「ああ、好きなのがありましたか?でも、買い過ぎじゃないですか?」
私をベッドに下ろすと、その紙袋を私のほうにずいっと差し出した。
「え?」
「お前にやる。」
「えっ。」
「俺はブランデーに合いそうな気に入った茶葉を見つけた。これで満足だ。後は―――――商売上手な店主に買わされたようなもんだ。」
リヴァイさんの手に取られた紅茶の缶を見て驚く。
「あっ、それ………。」
「あ?」
「――――なんでも、ないです。」
――――嬉しい。私があの時リヴァイさんの好みに合いそうだと思っていた紅茶を、選んでくれている。思わず顔が綻んでしまうのを抑えながら、紙袋の中を見た。
「お菓子ばっかりですけど?」
「そうだ。」
「リヴァイさん、甘い物食べないのに?」
「――――だからお前にやる。」
リヴァイさんがあまりに冷めた顔で言うから、面白くて―――――ついつい、笑ってしまった。