第76章 束間
ハルが部屋に運んで来てくれた晩飯を食ってから、やはりナナの事が気にかかり再び部屋を訪ねる。
ナナはベッドに座って、忙しくたくさんの資料に目を通していた。
「―――おい、何やってる。」
「何って………病院の経営についての……引継ぎ事項を確認しています。」
当たり前のように言うナナに呆れながら、側の椅子に腰かける。
「とんでもねぇ怪我をした奴のやることじゃねぇだろ。大人しく寝てろ。」
「だって時間がもったいなくて……。それに昨日の晩―――――…………。」
「なんだ。」
「いえ……なんでも………。」
「気になるだろうが。」
「…………昨日の晩、随分とぐっすり眠れたので……今日はまだ寝れそうにないんです。」
「ほう。それは俺に感謝すべきところだな。」
「いや、リヴァイさんも私より熟睡してましたよ。お互いさまです。」
ナナがほんの少し笑う。が、話題を変えさせてなどやらない。
「――――寝れなくてもだ。身体を休めろ。お前の母も言ってただろう。」
無理矢理ナナの手から資料を奪い取った。
「あっ……もう!」
「痛みはどうだ。」
「――――資料を取り上げられてムッとすることができるくらいには、マシです。」
「言っておくが、お前が寝るまで俺はここにいる。」
「えぇ。」
「嫌がるな。」
「――――兵士長は言い出したら絶対ですもんね。わかりました、諦めて寝ます。」
「いい子だ。」
身体をベッドの中に横たえようと少し動かそうとしたナナの表情がぴく、と動く。俺は布団をはぎとって、座っていたナナを一度横抱きに抱き上げてからそっと横たえ、布団をかけた。