第76章 束間
「お嬢様!!!なんて……なんてことですか……!すぐ、ベッドに……!」
ハルが随分取り乱した。
そう言えば私は大きな怪我などしたことが無かったから、とてもショックだったんだろう。
ロイもまた帰って来てからすぐに私の部屋に見舞ってくれて、とても動揺していたようだった。その矛先を、やはりリヴァイ兵士長に向けた。
「―――――なんであんたが付いていて、姉さんがこんな怪我をしてるんだよ……!」
「――――………。」
リヴァイさんは言い返しもせず、黙って俯いていた。
「やめてロイ!リヴァイ兵士長は、私のもう一人の仲間の命を救ってくれたの。私のことも、すぐに助けてくれた。私が生きていたのは、リヴァイ兵士長が助けてくれたからなの。」
「もう一人の仲間を救ったとか、僕には関係ない。僕は、姉さんのこの顔と足と――――医者の命とも言える手が傷付く前に、なんで守ってくれなかったか……その理由を、聞いている。」
「――――悪かった、としか……言えねぇ。」
「ロイ!!!やめて!!!!」
「――――ロイ、もうやめましょう。ナナは守ってもらうために調査兵団に入ったんじゃないのだから。」
ロイを嗜めたのは、母だった。
「リヴァイさん、娘を助けて頂いて―――――ありがとうございました。どうぞあなたも疲れを癒して――――、滞在中は、ゆっくりしてください。」
リヴァイさんに頭を下げた母を見て、ロイは不機嫌そうに顔を歪めて私の部屋を出た。
「――――ナナ、後で診るわ。今は少し身体を休めて。」
「うん………。」
「―――リヴァイ様、お部屋を用意しておりますので、こちらに。」
「ああ……。すまない。」
リヴァイさんはハルに連れられて、私の部屋を後にした。