第76章 束間
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朝日が差し込む光が眩しくて、目が覚めた。
手も脚も痛くて痛くて、とても怖い夢を見ていたんだけど―――――なぜかとても温かくて、安心して、その怖い夢もどこかへ行ってしまった。
私はぐっすり眠っていたんだろう、昨日よりとても気分がいい。
この懐かしい温かさは――――――目をやると、やっぱりリヴァイさんが隣で寝てる。
ふ、と笑みがこぼれてしまう。
私がぴくりとでも動くだけでリヴァイさんはいつもすぐ起きてしまうのに、今日はやけにぐっすり眠っている。
――――眠れない日々が続いていたのか……今はゆっくり、寝かせてあげよう。そう思って彼の肩にまで布団を引き上げようと両手で布団の端を掴んだ。
「―――――………。」
左手の人差し指と中指が、思うように―――――動かない。
それはそうだ、ナイフが貫通して――――指を動かすための筋も筋肉も、断たれてしまっている。
私は怖くなって、それ以上考えるのをやめたくて、また布団に潜り込んだ。
また微睡んでいると、もぞもぞとリヴァイさんの手が動いている。
起きたのだろうか、と思って確認してみても、寝ている。
でも、その腕は私を見つけ出すとすごい力で無理矢理引き寄せて、その腕の中に閉じ込めてしまう。
――――そういえばそうだった、同じ布団に入ったら、目が覚めてリヴァイさんの意志で腕を解いてくれるまで、ずっと離さないんだった、この人は。
「――――寝てるのに、どうやって感知しているんだろう……すごい感度……。」
1年以上ぶりでもその癖が抜けていなくて、思わず笑ってしまう。
「――――いますよ、起きるまで。どうせあちこち痛くて、逃げられないから―――――。」
そう言って、その腕の中に甘んじる私はとても狡い。
これは怪我の功名というやつだと、また込み上げる自嘲の笑みを堪えて、もう一度目を閉じた。