第75章 再燃
「――――黙れ……っ!!」
ビクターさんが押さえていた私の手首を離し、硬く握りしめられた拳が私の頬を打った。
視界が弾けるような衝撃と、口の中の血の味―――――。
その瞬間、私は自由になった右手で左手の掌に刺さったナイフを引き抜いた。
「――――くっ………!」
そのナイフで、ビクターさんの目を狙って横一線にナイフを振ろうとした瞬間、ビクターさんの背後からその人影が舞った。
―――――来て、くれた。
「――――よく耐えた、ナナ……っ!」
空気を薙ぎ払うような凄まじい蹴りに、ビクターさんは吹き飛んだ。
私の前に降り立ったリヴァイ兵士長が私の姿を見て、その表情が凍てつく。
「―――――――………。」
「リヴァ、さ……大丈夫、大丈夫です、私は――――――。」
何を言おうとも、耳に入っていないようだった。
無機質な表情に、ただただ憎悪だけを詰め込んだような冷たさ。
――――駄目だ、今度こそ本当に―――――リヴァイさんはビクターさんを、殺してしまう。私のせいで、リヴァイさんが人を―――――殺して、しまう。
「――――ナナ!!!!!」
遠くからリンファの声がする。
良かった、やっぱりリヴァイさんが助けてくれていた。
ビクターさんの方を見て、リヴァイさんが足を進める。私はあの日のように、リンファに懇願した。
「リンファ……っ……!お願い、お願い……っ……リヴァイ兵士長を、リヴァイさんを……止めて………っ……!殺させ、ないで……っ………!お願い……っ……!」
「―――――!!」
リンファは察して、リヴァイ兵士長の方へ駆けた。
「兵長!!もう、そいつは意識がない!大丈夫です、もうこれ以上……!」
「――――どけ。お前はナナの止血をしろ。」
振り返ったそのあまりの殺気に、リンファがビクッと震えて―――――身体を、動かせないようだ。無理もない、空気が震えるほどの殺気と―――――怒りだ。
ぐっと俯いて、私の方に来て、自身のシャツを裂いて掌と腿を強く縛って止血をした。処置を受けながら、なんとか言葉を紡ぐ。
「――――リヴァイさ…ん……。駄目、です……、やめて……。」