第75章 再燃
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リンファが消えたほうに、無意識で走り出していた。
どういうこと?私を狙ってたんじゃなかった。
リンファが、狙われていた――――――?だとしたら、私が助けなくちゃ……!
周りなんて見えていなかった。
ただリンファの姿を一心不乱に探して、恐怖に震えるような心臓の鼓動を抑えながら駆けたその時、目の前に黒いフードを眼深く被った何者かが突如目の前に現れ、私は途端にその人物の下に組み敷かれた。
「っっっ!!!」
「――――可愛いナナ………やっと捕まえた。今度こそ捕まえた。」
その声と、歪んだ笑みにあの日の恐怖が蘇る。
「………ビクターさん………――――――。」
震える身体と恐怖心を抑えながら、反抗と軽蔑の目でビクターさんを見上げる。
ビクターさんは以前よりも感情を宿さない壊れたような目で、ナイフを振り上げて―――――私の左脚の腿に、突き刺した。
「――――ぁああっ………!」
「前は反抗されてる間に邪魔が入ったから、反抗する気を削いでおかなくちゃ。」
続けてナイフを振り上げて、私の左の掌を同じく突き刺して―――――地面に貼りつけられた。
「―――――うあ"ぁっ………!」
念のためとでも言うように、私の右手首も強く掴んで地面に押し付けている。
「あの時みたいにリンファなら来ないよ。もう死んでるかな。」
「――――リンファは……っ……、無事、ですよ。」
「――――なに?」
4秒はとっくに過ぎていて、それでもリヴァイ兵士長が来ないのはきっと、リンファの命が危険に晒されたからだ。
リンファを助けに行ってくれている。
私の愛する戦友を守るために、戦ってくれているから。
そしてリンファも戦っている。
私だって負けない、屈しない。
「あなたは……、何も…っ……成長してないんですね。………虚しく、無いですか……?」
「は………?」
「力で私をものに……できると……?あいにく、私は卑怯で卑劣な人間は、嫌い……です……っ……。」
ビクターさんは、馬鹿にされたり侮辱されることをとても嫌う。
怒れ。
怒れ。
怒って―――――私を殴ればいい。
あの日みたいに。