第75章 再燃
ナナがリンファの消えた方を見つめて、その胸騒ぎに追いつめられたような顔をする。
「―――――耐えろ、動くな……!警戒しろ、自分の身を守れ……!」
ナナの姿を遠目で確認しながらそう呟いてみても、あいつがリンファよりも自分を優先するなどあるはずもなく、取り乱してリンファの消えた方へ駆け出した。
――――おそらく、周りなど見えていない。
リンファのほうの状況を伺うと、更に数十m離れたところで、大柄な男に馬乗りにされて刃を突き付けられている。
――――やっぱりか……!
「――――くそ……っ……!」
走って間に合う距離じゃねぇ。
立体機動を使うしかないとアンカーを射出した瞬間、視界の隅で―――――ナナの目の前に深くフードを被った男が立っているのを見た。
―――――――心臓が縮む心地を味わったのは、久しぶりだった。