第75章 再燃
出発の朝、リンファとお揃いのヘアゴムを付けて、兵団を発った。
相変わらず―――――視線は付きまとっていた。ずっと見られている不快感に総毛だつようだ。
「――――じゃ、行こうかナナ。」
「うん。」
「あたしから離れないでね。あんたのこと、守ってみせるから。」
「――――自分の身は自分で守るよ。……でも、心強い。ありがとう、リンファ。」
出立してしばらく馬を駆る。
兵団から随分離れてから、リンファと共にある条件に適した場所を探す。
『罠を仕掛けろ。襲わせる場所をコントロールしろ。平地ではなく、森の中だ。障害物が多くあって、人気の無い場所が望ましい。リヴァイは必ず一定の距離を保って―――――相手に感付かれることなく尾ける。安心して、おびき出せ。』
エルヴィン団長の言葉を頭の中で繰り返す。
鼓動が早くなる。リヴァイ兵士長のことも、リンファのことももちろん信じているけど―――――、ただただ、あんな狂気を込めた文字を送り付けて来るその人に、相対するのが、怖い。あの時の恐怖が、また蘇る。
「――――ナナ、大丈夫だから。」
「………うん。」
「あんまり怯えていると、感付かれる。あくまで休憩しているように、楽しい話でもしているように振る舞って。」
そう言ってリンファは少し笑って、馬を降りて気に手綱を繋いだ。
「――――休憩にしよう。」
「そうだね。」
私も同じく馬から降りて手綱を繋ぐと、明らかに私を見ているじっとりとした視線が貼りつき、嫌な汗が出る。