第75章 再燃
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「――――兵長!」
訓練の中の束の間の休憩時間に、ペトラが俺の方に駆けて来る。
俺の側にいてなにが面白ぇのか、何かにつけて教えを乞うたり、好きなものを聞いたりしてくる。その目に俺を映したいのであろうその気持ちは、学んだ。俺に好意を持っているのか。
アウラの時には気付けなかったそれに一度気付くと、こんなにもわかりやすく態度に出すのかと思うほど、ペトラはまっすぐに俺を見つめて笑う。
抱いて欲しいだの、キスして欲しいだの、付き合って欲しいだのの欲を押し付けて来る女よりは幾分マシだ。
―――――ペトラはほんの少し、イザベルを思い出させる。
「―――なんだ。」
「こないだ教えてもらった斬撃の入れかた、随分練習したんですよ!それから―――――」
嬉しそうに話す姿に、ほんの少しほだされる。こうしてペトラが俺に絡んでくると、今度は必ず―――――
「おいペトラ、お前兵長独り占めしてんじゃねぇよ!」
「げ、オルオ!」
目ざとくオルオがやってくる。いつもの流れだ。悪態を付き合っているが、サッシュとリンファのようにお互いを高め合ってる関係性は、見ていても気分がいい。
「あっ、兵長!」
「エルド、グンタ。」
向上心のある奴らは、自分の糧になりそうな奴と仲を築くからか、自ずと集まってくる。エルドはもちろんだが、グンタも―――――稀に見る急成長を遂げていて、先が楽しみだ。そんな奴らがぎゃあぎゃあと騒ぐ中で、ペトラが満面の笑みを向ける。
「兵長、次の壁外調査も頑張りましょうね!」
「―――ああ、そうだな。」
「ペトラ、次はビビり過ぎて失態見せんなよ?」
「う、うるさいです!エルドさん!!」
「え?失態ってなんすか?なんかしたのかよペトラ。」
「黙ってグンタ!!!!」
こいつらを――――大事な仲間を死なせないように、この手に収まる大事な奴らは俺が守ってみせる。
その判断を間違わないために、俺はあの冷たい夜を過ごしている。俺の大事なものは、守るべきものはここにあると、そう強く言い聞かせる。