第75章 再燃
「おお、おはようナナ。」
「サッシュさん。おはようございます。」
「今日は訓練出るだろ?」
「はい!壁外調査も控えてますしね。年末年始で身体もなまっちゃったし……。」
「久しぶりに使う相棒の点検、怠るなよ!」
「はい!」
朝食を終えて、みんながバタバタと訓練のためにそれぞれの持ち場へと散っていく。
そんなたくさんの兵士が行き来する中で、ふとあの香りが鼻先をかすめた。
ハッとして振り返り、思わず呼び止めてしまう。
「リヴァイ兵士長!」
「…………。」
リヴァイ兵士長はいつも通り、何の感情の起伏もない冷めた目のまま振り返った。
「なんだ。」
「飲んで下さったんですね。お口に合いましたか?私のお気に入りは。」
その言葉に、リヴァイ兵士長は目を丸くする。
「――――ああ、悪くなかった。が、なんでわかった。」
「香りが、しました。私と同じ香りが。」
「――――……なんだそりゃ、ミケじゃあるまいし……。」
リヴァイ兵士長がまた、少し不機嫌そうにフイッと顔を背けた。
「呼んだか?」
同時に大きな手が私の頭の上にぽんぽんと置かれて、その手の先を見上げると、ミケさんその人だ。
「おはようございます。」
「おはようナナ。今日は対人格闘の練習に俺が付き合ってやろうか。」
「えっ、いいんですか?」
「やめろミケ、ナナを殺す気か。」
リヴァイ兵士長がはぁ、とため息交じりに言葉を投げた。
「死なない程度に頑張ります!ミケさん、宜しくお願いします。」
私がまたミケさんを見上げると、ミケさんはほんの少し笑って、リヴァイ兵士長がやれやれといった顔で背を向けた。