第75章 再燃
カップとポットにお湯を入れて温めている間に、さらにお湯を沸かす。熱々のほうが、美味しくなるから。
沸々と気泡が上がってくると沸き上がる直前に火を止めて、温めておいたポットの中にスプーンで掬った茶葉を入れる。
その茶葉を躍らすように、勢い良く沸きたての熱湯を流し入れて蓋をして、蒸らす。
待っている間が、ワクワクする。
徐々に立ち上がる良い香りは、私好みの甘くて奥行きのある、芳醇な葉の香り。
綺麗な紅色の液体を、最後の一滴までカップに垂らすと――――、私はカップを大事に大事に両手で包んで、口を付けた。
「―――――美味しい………。」
早朝に目が覚めてしまった私は一人、まだ誰もいない食堂で大好きな紅茶を楽しむ。
まるで平和な毎日が開けるような、そんな気分になる。
けれど実際のところは、あと数週間でやってくる壁外調査の準備で武器を研ぎ、訓練をし、平和とは程遠い一日がまた、始まる。