第74章 心憂
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ナナの長期離団の話が色濃くなったことを、あいつに話しておかなければならない。
その扉をノックすると、少しの間の後に返事があった。
扉を開けようと手を伸ばすと、内側から勢いよく扉が開いて、一人の女性兵士がジャケットを抱えて気まずそうに出て行った。
「あっ……団長……っ、失礼します……!」
「…………。」
ソファに座ったリヴァイは面倒そうに俺に目を向ける。
「――――取り込み中だったか?」
「――――まぁそうだな。」
リヴァイはふっと息を吐いてソファに寄りかかって、足を組んだ。
意外だった。
こうも簡単にナナ以外の女性に手を出すとは。
まあ……ナナがリヴァイの元を離れてから1年か……性欲を持て余すのも、無理はないが。
どこか心の片隅で小さくニヤリと口角をあげてほくそ笑む自分がいることに、気付かないふりをする。
「ナナのことはもうどうでもいいのなら、特に話すことでもない。」
「あ?」
「別の女性と上手くいっているのなら、わざわざそれを乱す気はない。」
「ナナのことがどうでもいいわけねぇだろ。話せよ。なんだ。」
「次の壁外調査の後―――――長期離団をする。期間は約1年半だ。」
私の言葉に、リヴァイは驚きを隠せない様子で目を見開いた。
「――――家のことか。」
「ああ、父上が亡くなって――――母が継ごうとしているようだが、ナナの母は離婚して家を出ている立場だからな。世間体やもろもろで、しばらくは姉弟の支えがなければ難しいのは理解できる。軌道に乗るまで、調査兵団を離れたいと。」
「…………そんなに長期間、あの弟のところに置いて―――――……。」
リヴァイが眉間に皺を寄せて発した言葉が、私にはその真意が読めなかった。
「弟……?ロイ君がどうかしたのか?」
リヴァイは私の目の奥をほんの一瞬観察して、続けた。